12-1.嵐の前の静けさ*

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「うちら、今から結婚するでしょう? 実篤(さねあつ)さんもうちも自営業じゃけぇ調子のええ時は沢山(よぉけ)(もう)かって気が大きゅうなりがちです。けど……落差が激しいんも雇われの身とは違うところじゃって思うんです。じゃけぇね、もしもに備えて無駄遣いはなるべくせんようにしちょった方がええかなって思うんですけど……どうですか?」  年下なのに堅実。  きっとそれはある日突然事故で両親を失うと言う経験をして、生活を一変することを余儀なくされたくるみならではの発想なんだろう。  実篤は年齢こそ自分の方が上だけれど、くるみのそういう考え方を心の底から尊重したいと思った。 「それにね――」  そこでゴニョリと恥ずかしそうに言葉を揺らしたくるみにキョトンとしたら、「それに……もし。もし赤ちゃんが来てくれたりしたら……うち、しばらくの間お仕事お休みせんといけんなる思いますよ?」  仮につわりが酷くなかったとしても……女性であるくるみが産前産後、働くのが無理になるのは当然のことだ。  照れながら〝実篤との子供を望んでいる〟と匂わせてきたくるみに、実篤は心臓を鷲掴(わしづか)みにされて。  雄としての本能が、好きな女性を(はら)ませてもいいと許可してもらえたことに、狂喜乱舞する。
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