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六月の半ば。
発注していた結婚指輪が出来上がったと宝石店から連絡が入って、くるみとふたり。休日が合致している直近の水曜を利用して店を訪れた。
店頭で確認のために、とパカッとふたを開けられた白いベロア素材のリングケースは、通常のものより横長。
それもそのはず。
中には実篤用の大きなリングと、くるみ用の小さなリングが仲良く並んで収められていたのだから。
ケース内のふわふわの溝にグッとはめ込まれたプラチナ製の指輪を二人して手に取って。
まるで示し合わせたみたいに二つのリングを重ね合わせてしまったのにはちゃんと理由がある。
「あーん。やっぱり素敵です!」
くるみがほぅっと吐息を漏らしたのを見て、実篤は照れ臭いと思いつつもくるみが気に入ったこのデザインにして良かったと思った。
この店はデザイナーにこちらの要望を伝える形でデザインから全てオーダーメードで指輪を作り上げてくれる。
入れたい石のこと、刻みたい図柄のことなどアレコレ思いつくままを二人で言葉にしていって。
実篤はくるみの指輪にだけ、愛らしいリスを入れて欲しいと要望を出したのだけれど。
それ以外は概ねくるみの意見が採用されている感じ。
そうしていくつか出された原案の中からくるみが選んだのが――。
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