12-2.思い立ったが吉日?

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 くるみの細くて小さな左手薬指には実篤(さねあつ)が贈った婚約指輪と、今はめてあげたばかりの結婚指輪が重ね付けされてキラキラと輝いている。  それを見るとはなしに見やりながら実篤が自分のリングをくるみに手渡すと、くるみがそれを指先につまんで「実篤さんの指輪、すっごく大きいです」と、溜め息を落とした。 「何かもう、そういう違いを感じただけでここら辺がキュンってなってソワソワするん……変でしょうか?」  くるみが自らの胸の辺りにそっと手を載せてつぶやいて。  彼女の指では親指に入れたってブカブカであろう実篤の指輪を、うっとりした様子で()めつ(すが)めつするから。  実篤は思わず「俺も(おんな)じよ」と返していた。 「……実篤さんも?」  くるみがキョトンとした様子で自分を見上げてくるのが可愛すぎてたまらない。  衝動が抑えきれなくなった実篤は、指輪を持ったくるみの手をそっと両手で包み込んだ。 「くるみちゃんの小さい手ぇ、見よったらね。俺、キミを守っちゃげたいって気持ちがあふれて何かよく(よぉ)分からんけどムズムズするんよ」  くるみの両手を内側に閉じ込めたままギュッと手指に力を込めたら、くるみがポワッと頬を赤く染める。 「うち、実篤さんに愛されて……ホンマ幸せ(もん)ですね」  言って、実篤をじっと上目遣いで見上げてくるから。  実篤はここが宝石店のカウンターで。  目の前に困ったような顔をして座る店員がいることも忘れて。  思わずくるみを抱き寄せて口付けそうになってしまった。  途端コホンッと小さく。  店員が、二人だけのお花畑に旅立ちそうになっていたくるみと実篤を咳払いで現実に連れ戻してくれなかったら、危うく大変なことになるところだった。
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