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「う、嬉しいです……! ダメなんかじゃありません! けど……うち……うち……。こんなに幸せで……ホンマにいいの? 夢落ちとかじゃ……ないです、よ、ね?」
くるみが実篤を見上げてポロリと涙を落とすから。
実篤はくるみをギュウッと抱き締めて、「ほら。痛かろ? 夢なんかじゃないって分かった?」と問いかけて。
そのまま畳み掛けるみたいに
「それに……こんなに可愛ぅーて良い子が幸せになれんわけないじゃ? くるみは俺の大事な女性なんじゃけ、誰よりも幸せになってもらわんと、俺が困るんよ」
そう言わずにはいられなかった。
というより――。
「正直俺の方がくるみちゃんより数倍幸せじゃけぇね」
こんな可愛い奥さんに恵まれるのだから。
そうつぶやいたら「ううん。うちの方が……」とくるみが返してきて。
いや、自分の方が、の押収が始まってしまった。
ひとしきり二人で自分の方が幸せに違いないと言い合いをしてから、ふっと静かになった瞬間。
二人しておかしくなって。
「うちら、ホンマ似た者同士ですね」
「俺ら、ホント似た者同士じゃね」
同時に同じようなことを言って。それが、二人ともたまらなく幸せなことだと思えた。
たまたま指輪が出来た日の、直近のお休みだった今日。
日付にもお日柄にも、何の思い入れもない六月十七日水曜日晴れ。
幸いにも偶然大安だったこの日。
〝木下くるみ〟は〝栗野くるみ〟になりました。
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