12-3.キミの大事なモノを守りたい

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*** 「朝食は卵と高菜のサンドイッチで大丈夫(ええ)ですか?」  実篤(さねあつ)が一緒に住むようになってから、くるみは自宅用に一斤余分に食パンを焼いてくれるようになった。  今朝はそれを使ってサンドイッチを作ってくれるらしい。  九月に入って一週間ばかりが過ぎ、実篤も転勤時期の繁忙期に入っている。  今まで住んでいた由宇町(ゆうまち)より御庄(みしょう)からの方が、通勤にかかる時間が三分の一に抑えられて、ほんのちょっぴり気持ちにゆとりが出来ている実篤だ。  とはいえ、今日は朝からあいにくの雨模様。  岩国市はどうやら今日の夕方から夜にかけて、大型の台風十五号の通り道になるらしい。  十五時(さんじ)辺りから暴風域に入るとの予報で、きっと大雨に見舞われている今朝は、道路もいつもより混雑しているだろう。  こんな日は寄り道などせずまっすぐ会社へ向かいたい。  そう思っていたら、「お弁当も作っちょきましたけぇ()かったら持って行ってください。おかず、殆どがお総菜パンの残りの具材なんじゃけど……卵焼きはちゃんと朝焼きましたけぇ」とくるみがお弁当箱をテーブルの上に載せてくれる。  コンビニなどへ寄り道したり、昼食を食べに出掛けなくていいのはすごく助かる。  そう、物凄く助かるのだけれど――。 「くるみちゃん、無理しちょらん?」  どうあっても実篤と暮らすようになってからのくるみは、負担が増しているように思えて仕方がないのだ。
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