12-3.キミの大事なモノを守りたい

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「え? ……うち、無理なんかひとつもしちょらんですよ?」  くるみがキョトンとして実篤(さねあつ)の顔を見詰上げてくるから。  実篤はそんなくるみの目を探るようにじっと見つめ返した。 「――ホンマに?」 「はい、ホンマに」  くるみは不安そうに眉根を寄せる実篤にクスッと笑うと、実篤の方へ近付いてきて心配性の旦那様の頭をよしよしした。 「うちね、元々お料理するん、大好きなんです。好きじゃないとパン屋なんてやろうとは思わんですし……。お客さん(らぁ)が喜んでくれるんを思い浮かべながら作業するんも本当(ほん)に楽しいんです。だけどね(ほいじゃけどね)、それにも増して――」  そこで実篤の頬を両手でギュッと挟み込むと、くるみが不安そうに瞳を揺らせる実篤の顔を真正面からじっと見上げてくる。  くるみの色素の薄い琥珀色(アンバー)の瞳に、自分の顔が映っているのが見えて。それに気づいた実篤の心臓が、大好きなくるみとの至近距離に照れてドクンッと跳ねた。 「家で実篤さんのために作る料理はそれとはまた全然(ちごぉ)ーて……。何て言うたらええんでしょう。――ああ、うち、また家族が出来たんじゃなぁって実感できて……ホンマに幸せなんです」  そこで実篤の顔を引き寄せて背伸びをすると、彼のおでこにチュッとキスを落として、くるみがもう一度ニコッと微笑んだ。  柔らかなくるみの唇の感触に、実篤の全身にぶわりと熱い血が駆け巡る。  今の自分は耳まで真っ赤になっているだろうなと分かるくらい全身が熱い。 「だからね(ほいじゃけぇね)、うちが無理しちょるなんて思うちょるんじゃったら……全然(てんで)見当違いですけぇ。むしろ――」  そこで実篤にとどめを刺すみたいにぎゅぅっとしがみ付くと、くるみがぽそりとつぶやいた。
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