12-3.キミの大事なモノを守りたい

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 今朝、くるみにはなるべく早く帰って家で待つように伝えたけれど、あの指示は間違ってはいなかっただろうかと不安になる。  実篤(さねあつ)の言葉を受けて、さすがと言うべきか。  若い田岡がすぐさま携帯を操作して。  リアルタイムで利用者たちが近況をつぶやく『ツブヤイター』の画面を操作して、岩国市近郊の最新のツイートをチェックしてくれた。  しばし黙って画面を見詰めていた田岡が、「あのっ! 社長が今住んでおられるの(住んじょっての)って御庄(みしょう)でしたっけ!?」と慌てたような声を出す。 「うん、そうじゃけど」  言ったら、「大変です。何か川西の方やら柱野(はしらの)の方やら、大水が出て道が水に浸かっちょるって」と画面を見せてくれた。  田岡が見せてくれたスマートフォンの画面には、見慣れた川西の交差点近辺の、見たことのない光景が写っていて。  玖珂(くが)方面・錦帯橋(きんたいきょう)方面・平田(ひらた)方面に続く三差路付近がどっぷりと泥水に沈んでいた。  付近に県立岩国高校があるため、そこの交差点には歩道橋が掛かっているのだが、その歩道橋の状況から判断するに軽く一メートルくらいは水没していそうで。  交差点全体が、まるで泥水をたたえた池のように見えた。
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