12-3.キミの大事なモノを守りたい

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***  腰の辺りまで水が上がって来てしまった。  いつもより少し遅めに家に着いたくるみだったけれど、その時点で家の近くのあちこちの地域で浸水しているのが分かって……。 (このままじゃ、うちん()が浸かるんも時間の問題じゃ)  そう思ったくるみが、家の中の大事なモノを持ち出そうと中に入ってすぐ、見る間に泥水が押し寄せて身動きが取れなくなってしまった。  くるみは大事な商売道具である愛車を高台へ上げることも、必要なものをどこかへ避難させることも出来ないまま一気に流れ込んできた泥水に浸かって、家の中で途方に暮れていた。  もしかしたら自分が警報を聞きそびれている間に御庄川(みしょうがわ)上流のダム湖で放水が行われたのかも知れない。  そう思えば、ずっとサイレンみたいなものが鳴り響いているし、防災無線が何か言っている。けれど雨と風でほとんど聞き取れなかったから。  隣近所に人の気配がないことからもそんな気がして、くるみはにわかに心細くなった。  おまけに雨は一向に止む気配がない。このままだと胸の辺りまで浸かるのも時間の問題に思えた。  しかも。考えてみたら自分は今、家の中にいるのだ。  床が高いはずの家の中でこれなら、きっと外へ出たらもっと。
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