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くるみは寒さからだけではない悪寒に身体を震わせると、それでもここまで来たのだからという思いに駆られて一生懸命仏間を目指そうとして。
浮力で浮いてきた家具に行く手を阻まれて立往生してしまう。
濁った水の中、ひざ裏辺りにトン……と何かがぶつかって来てひざがカクンとなったくるみは、危うく水の中に転びそうになって……。慌てて踏ん張ったらお尻の辺りに違和感を覚えた。
その感触でジーンズのお尻ポケットに入れたままにしていたスマートフォンのことを思い出したくるみは、慌ててそれを取り出してみる。
防水機能のお陰で何とか携帯が生きていることを確認したと同時、通知がたくさんたまっていることに気が付いた。
見れば、実篤からの通知に混ざって、栗野の実家の義父母――連史郎や鈴子からの着信、鏡花や八雲からのメッセージを受信した旨を知らせる通知がずらりと並んでいた。
開かなくてもきっと、みんな自分を心配してくれているんだと分かったから。
くるみは涙目になりながらスマートフォンの画面を見て。
自分はもう独りぼっちじゃないのだと今更のように自覚した。
とりあえず実篤に電話を掛けようと、通知のひとつをタップしようとしたらつるりと手が滑ってスマートフォンが泥水のなかにトプンと沈んで見えなくなってしまう。
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