12-3.キミの大事なモノを守りたい

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「――くるみ!」  再度名前を呼ばれて、くるみは屋根の上で思わず上体を起こした。  と同時、一際強く吹き付けた風にあおられてよろめいて。  屋根から転げ落ちそうになってしまう。  「きゃっ!」と小さく悲鳴を上げながら慌てて屋根にしがみ付き直したら「危ないけぇ、そのままじっとしちょき!」と怒ったみたいな声が飛んできた。  くるみは実篤(さねあつ)がこんな風に声を荒げるのを聞いたことがなかったから。  驚いてビクッと身体をすくませたけれど、決してそうされたことが不快だったわけではない。  家のすぐそばまでボートを付けてくれた実篤が、舟が流されないよう柱へ(もや)っているのが見えた。 「実篤さっ、……うち……」  実篤が屋根の上まで上がって来てくれて、ギュッと腕の中に抱き締められた瞬間、くるみは溢れ出す感情が抑えきれずに嗚咽(おえつ)する。 「連絡つかんけん、心配した! 無事でホンマ()かった!」  逃げ遅れたくるみを責めることなく、ただただ安堵の言葉をくれる実篤に、くるみはぎゅうっとしがみ付いて泣きじゃくって。 「うち……お父、さんとお母さ、んの……()(はい)……持って出、れんかっ、た……」  途切れ途切れ。それがどうしても持ち出したくて無理をしたのだと告白した。
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