12-3.キミの大事なモノを守りたい

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 くるみの告白を聞いて、実篤(さねあつ)は彼女を抱きしめたまま気付かれないよう息を呑んだ。  仏壇仏具は水にとても弱い。もちろん、位牌だって例外ではないから。  長く不動産業を営んでいれば、顧客の家が今のこの家のように水害にあって浸水した現場を見たことだって、一度や二度じゃない。  仏壇などは水に浸かれば金箔がはがれたりするし、渇いた後もカビが生えたりしやすくなる。  黒塗りされた部分も浸水で塗装が浮いたりしてでこぼこになったりと、修繕や買い替えを余儀なくされることが主流だ。  くるみが言う両親の位牌にしても、見つけたところで恐らくはもう。  そう思いはした実篤だったけれど、だから諦めて?だなんて言えるわけがない。  くるみに、自分と同じようにライフジャケットを着せると、彼女の顔をじっと見つめた。 「くるみちゃん、今から下にとめてあるボートに乗るけんね? 足元滑りやすいし風も強いけぇ足滑らさんように慎重に降りんといけん。いい(ええ)?」  位牌のことには一切触れずにそう告げた実篤に、くるみが涙目のままこくりとうなずいた。  自分が先に下へ降りて水の中。  くるみの足を肩で支えるように踏み台になって彼女を無事屋根から降ろすと、実篤はくるみをボートに乗せてビニール袋の中から銀色のアルミ製の防寒・防水シートを取り出した。
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