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上の方にある位牌段のところまでは水に浸かっていなかったから、夫婦連名になっているくるみの両親の夫婦位牌も、二つ折りできるようになったシンプルな写真たてに入ったふたりの遺影も無事で。
実篤はホッと胸を撫でおろすと、濡らしたりすることがないよう、持ってきたビニール袋を二重にして、丁寧に位牌と写真を入れて、元来た道をたどるようにしてゆっくりとくるみの待つ舟へと戻った。
***
実篤が屋内へ消えてからずっと。
ソワソワと落ち着かない様子で舟縁にしがみついていたくるみは、実篤の姿を認めるなりホッとしたように目一杯伸ばしていた身体を縮こまらせる。
そうして――。
「くるみちゃん、これ」
実篤が丁寧にビニールでぐるぐる巻きにした両親の位牌と遺影を手渡してくれた瞬間、大粒の涙をこぼして実篤に縋り付かずにはいられなかった。
それは雨が降っている中でもしっかり分かるほどのくしゃくしゃの泣き顔で。
実篤はボートに乗り込んでそんなくるみをギュッと腕の中に抱き締め直すと、今度こそホッとして肩の力を抜く。
――俺はね、くるみちゃんのことはもちろん、キミの大事なモンも全部……。出来るだけ沢山守っちゃげたいんよ。キミがいつも俺の横で笑っていられるように。
そう、心の中でつぶやきながら。
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