12-4.くるみの覚悟と実篤の決意

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「前に芸能人の方が自宅のエレベーターはほとんど使わんって話していらした(言うちょっちゃった)の、うち、テレビで観ましたよ? 定期的なメンテナンスやらランニングコストもバカにならん言いますし、なくても大丈夫でしょう?」 「じゃけど荷物多いときとかくるみちゃんの細腕で上まで持って上がるん大変よ?」 「うちには実篤(さねあつ)さんがいて下さる(おってくれちゃって)じゃないですか。もしもの時はちゃんと頼りますけぇ」  そんな感じで結局エレベーターは却下されてしまったのだけれど。実篤は密かにもしもの場合は後付けも出来るかと思っていたりする。  そんなことよりも――。 「キッチンん横のここへパントリー作るんは反対せんよね?」  一階のパン作りのための厨房とは別に、二階には栗野家(くりのけ)としてのキッチンを作る予定だ。  台所に立っていてもリビングの方が見渡したいと言うくるみの要望で、アイランド型にしようということになっているのだけれど、そのシステムキッチンの左手奥のスペースをパントリーにしたいと実篤が言って。  くるみは実篤が見せてくれた設計図を見てそこはこくりとうなずいた。 「食材やらのストックもそうですけど……フライパンやらお鍋やらって結構かさばるけん、そういうのをキッチン周りの収納とは別に仕舞えるスペースがあるんは嬉しいです」  台所は言うなれば料理好きなくるみのお城だから。  ニコッと微笑んだくるみを見て、実篤はを実行に移すならこのスペースだな、と思った。
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