終章.最上級の愛をキミに

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「この写真、リビングのここへ飾りたいです。いいですよね(ええですいね)?」  くるみが、A4サイズくらいの額縁を手に、実篤(さねあつ)を振り返って。  実篤は「えっ。それをそんなに(そんとに)目立つところに飾るん⁉︎ 別のにせん⁉︎」とソワソワした。 「だって(じゃって)、この実篤さん、凄く(ぶち)かっこええですもんっ。これがええです」  額縁の中には、黒紋付(くろもんつき)羽織(はおり)(はかま)姿の実篤ともに、白無垢(しろむく)に綿帽子姿の愛らしいくるみの姿。  半年ばかり前。  十月にした結婚式の前撮りのとき、錦帯橋(きんたいきょう)で撮った写真だ。  アーチのてっぺんへ立った二人の背後に、城山に建つ山城――岩国城(いわくにじょう)も小さく写っていた。  式の時にも神前式で、同じく和装を参列者の前で披露した二人だったのだが、妹の鏡花(きょうか)から後日、「くるみちゃんは清楚ですっごく(ぶぅ〜ち)綺麗じゃのにお兄ちゃんは極道の人みたいじゃったわぁー!」と、滅茶苦茶笑われたのを覚えている。  それで実篤は眉根を寄せたのだけれど。  くるみはそんなのお構いなしといった様子で、鼻歌まじりに和装姿の写真を壁に掲げては「この辺がええかなぁ」とかしきりにつぶやいている。  そんなくるみの様子に実篤が言葉に詰まっていたら、 「あっ。もちろんこっちのふたつも一緒に飾りますけぇ安心してくださいね?」  くるっと振り返ったくるみが、にっこり笑って別のパネルを掲げて見せる。  くるみの手には、同じような額縁入りの写真がもう二枚あって。
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