終章.最上級の愛をキミに

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 一枚目はプリンセスラインが美しい純白のウェディングドレスを着たお姫様みたいなくるみの横。ネイビーブルーのモーニングに身を包んだ実篤(さねあつ)が眉間に皺を寄せてガチガチに緊張してこちらを睨んでいるように見える写真。  もう一枚はお色直しで着た、桜色のベルラインカラードレス姿でふんわり微笑むくるみと一緒に、黒いタキシード姿の実篤が隣の花嫁にうっとりと見惚れて目尻を下げている写真だったのだけれど。  どちらも鏡花(きょうか)から散々「お兄ちゃん、ホンマ、任侠(にんきょう)映画に出れそうじゃったよ!?」とか「美女と野獣の実写版が出来そうで驚いたけん」と揶揄(からか)われまくった衣装だ。  無論、くるみに関しては誰も彼もが手放しで可愛い、綺麗……と褒めまくりだったのは言うまでもない。 「額に入れられそうなサイズの写真、俺がおらんのも何枚かあったと思うんじゃけど」  花嫁だけを撮ってもらった写真だって、実篤の独断と偏見でたくさん引き伸ばしたはずなのだ。  飾るなら断然そちらの方が華やかでええじゃろ、と思った実篤だったのだが。 「(なん)バカなこと()うちょるんですか。うちだけの写真飾っても仕方がない思いません? 誰がなんと言おうと、うちは実篤さんと一緒に写っちょる写真がええんです! 実篤さんがおらん写真なんか飾っちょっても、お友達やら呼んだ時にうちの旦那さんカッコええじゃろ?って自慢出来んけぇ嫌です!」 「いや、だけど(ほいじゃけど)」  誰が見たって鏡花が言った通り、美女と野獣の写真よ?という言葉を、実篤は寸でのところで何とか飲み込んだ。  そんなことを言おうものなら、くるみに悲しい顔をさせてしまうのが目に見えていたからだ。  今、実篤はくるみに極力負担をかけたくない。  何故なら――。
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