終章.最上級の愛をキミに

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 本当は御庄(みしょう)の家を解体した時――いや、解体すると決めた時、リビングのローチェストへの廃材利用同様、このこともくるみに打ち明けるべきだったのかも知れない。  だが、実篤(さねあつ)はどうしてもこちらに関しては〝ちゃんと形にしてから〟くるみに見せたかったのだ。  もしうまくいかなかったら、くるみを変に悲しませることになるかも知れなかったし、それだけはどうしても避けたかったから。 *** 「ほら、設計するときに話したじゃん? パントリーのこと」 「はい。うちとのんが出来ちょるって……業者さんから聞かされました」  くるみはリビングのローチェスト同様、パントリー内に設置予定の作り付け棚の図面も見せてもらっていた。  棚の高さなどについても、手直しして欲しいところにはその都度図面上でちょいちょい口出しもさせてもらった。  実家の廃材が再利用されたローチェストのあるリビングのことが気になり過ぎて、正直パントリーについては気持ち後ろの方へ興味関心が押しやられてしまっていたくるみだ。  キッチン用品を仕舞う段になったらイヤでもそこには入るだろうし、後でいいかな?とさえ思っていた。  だけど、どうやら実篤はリビングのことはそこそこに、パントリーの方を見て欲しいらしい。  実篤の、どこか視線に、くるみは軽い違和感を感じて。 (実篤さん、何を企んじょるん?)  そんな風に思ってしまった。
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