終章.最上級の愛をキミに

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***  実篤(さねあつ)と、くるみのお腹のなかのおチビちゃんは、いわゆるハネムーンベビーだ。  結婚式を終えるまでは、妊娠による体調不良や体型の変化で、くるみが希望通りの式を出来なくなってはいけないと、実篤が断固として避妊を怠らなかったから。  入籍後数ヶ月間、くるみは妊娠しなかった。  それでだろうか。  式が終わった日の夜、くるみが旅先の宿で待ち構えていたように実篤の手を握って誘い掛けてきたのは。 「うち、披露宴(ひろうえん)で好きなドレスも着せてもろうたし、仲のいい(ええ)お友達も呼んで……思うようなお式が出来ました。……だから(ほいじゃけぇ)もう(はぁ)、いつ赤ちゃんに来て(もろ)うてもええなって思うちょるんですけど……実篤さんは如何(いかが)ですか?」  実篤もそれには大賛成だったから、二つ返事でうなずいて、その日を境に避妊なんてしなくなったのだけれど。  まさか子作りを意識するようになってそんなにすぐ赤ちゃんが来てくれるだなんて、夢にも思っていなかった二人だ。  だって避妊しなくなったからといって、女性側の排卵などとタイミングが合わなければ子供は出来ないのだから。  現に毎日のように夫婦生活を営んでいてもなかなか子宝に恵まれないという話はよく聞くし、実篤とくるみも一年以内を目処(めど)に授かれたらええね、ぐらいにゆるっと考えていたのだけれど。  二人の予想に反して式後すぐにコウノトリが来てくれて、とても驚かされて。  それと同時。思わずくるみをギューッと腕の中に抱きしめて、くるみと一緒にほろほろ嬉し泣きしたのを、実篤はつい先日のことのように覚えている。
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