終章.最上級の愛をキミに

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「今こうしてくるみちゃんと夫婦になれちょるん、何か信じられんわ」  しみじみと吐息を落としたら、くるみが実篤(さねあつ)の腰にキュウッと華奢(きゃしゃ)な腕を巻き付けてくる。  そのまま実篤を見上げて首をフルフルと振ると、 「――夫婦じゃないです。家族です」  言って、にっこりと笑って見せた。  お腹の赤ちゃんと、実篤と、くるみ。 「うちが()くした家族(もん)を、実篤さんがみんなみんなまた与えて下さいました(くれちゃったです)。うちは実篤さんに出会えて本当(ほん)に幸せじゃて思うちょります」  実篤が惚れた、色素の薄い瞳でじっと見上げられて、実篤は胸が締め付けられて苦しいくらいに、くるみのことを愛しい!と思った。 「……実篤さん、大好きです」 「俺もくるみちゃんのことが好きで好きでたまらんよ」  これから先も、こうしてじっと見つめ合うだけで――。  眼前の相手に、何度でも恋に落ちることが出来ると確信したふたりは、吸い寄せられるように自然な動きで唇を合わせた。  祖先から大切な宝物や伝統を受け継ぐとされるサムシングオールド(Something Old)は、先祖から脈々と受け継いできた二人自身の血と、生まれてくる予定の〝娘〟(おちびちゃん)――。  二人の新しい生活の第一歩を踏み出すためのサムシングニュー(Something New)は、新しく建てたばかりのこの家。  幸せな結婚生活を送っている人の幸福をおすそ分けしてもらうサムシングボロード(Something Borrowed)は、今もきっと天国で仲睦まじく暮らしているはずのくるみの両親から受け継いだ、彼女の実家の廃材から作った作り付けの棚たち。それから、実篤が両親から引き継いだクリノ不動産。  純潔の象徴とされるサムシングブルー(Something Blue)はくるみの左手薬指に。  結婚式の時には準備できなかったサムシングフォーが全てそろった栗野家(くりのけ)の将来は、きっと。  未来永劫(えいごう)幸せな笑い声に包まれた、明るいものに違いない――。    【END】  執筆期間:2021/09/15〜2023/01/23  エブ連載期間:2021/10/16〜2023/01/24
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