3.月が綺麗ですね

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「あのさ、くるみちゃん。俺、一応男なんよ。そこら辺、間違いとか……あると困るな、とか思いよーるんじゃけど」  意を決して彼女の真正面、くるみを真っ直ぐ見下ろすようにして「理性が崩壊して間違いとか起こったらどうするん?」と言う思いを込めてわざと威圧的に声を低めれば、大きな瞳で驚いたようにじっと見つめ返された。 「間違う? 実篤(さねあつ)さん……? ?」  微妙ズレた感じでそこまで言って、ハッとしたように息を呑むと、 「あっ! あの……実篤(さねあつ)さんっ? もしかして……ご自分のお顔、女の子に見間違えられるかも?とか思うて気にしてらしたり(ちょっちゃったり)?」  頓珍漢なセリフと共に顔をじっと見上げられて、「はっ?」とつぶやいたら「こんな背が(たこ)ぉーて男らしい顔つきをした女の子はおらんですけぇーね? 筋肉じゃってめちゃ(ぶち)付いちょるのに。――もぉ、実篤(さねあつ)さん、いきなり訳分からんこと()うて笑かさんちょいて!」と吹き出されてしまう。 (いや、訳分からんこと()ーちょるん、くるみちゃんの方っ!)  と頭の中でツッコミを入れている実篤(さねあつ)をよそに、くるみが続ける。 「ひょっとしていつもうちに聞いてきていらした(きよっちゃった)強面云々(こわもてうんぬん)〟も、本音は女の子顔が隠せちょる?って確認じゃったりしました?」
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