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「あのさ、くるみちゃん。俺、一応男なんよ。そこら辺、間違いとか……あると困るな、とか思いよーるんじゃけど」
意を決して彼女の真正面、くるみを真っ直ぐ見下ろすようにして「理性が崩壊して間違いとか起こったらどうするん?」と言う思いを込めてわざと威圧的に声を低めれば、大きな瞳で驚いたようにじっと見つめ返された。
「間違う? うちが実篤さんを……? 何に?」
微妙ズレた感じでそこまで言って、ハッとしたように息を呑むと、
「あっ! あの……実篤さんっ? もしかして……ご自分のお顔、女の子に見間違えられるかも?とか思うて気にしてらしたり?」
頓珍漢なセリフと共に顔をじっと見上げられて、「はっ?」とつぶやいたら「こんな背が高ぉーて男らしい顔つきをした女の子はおらんですけぇーね? 筋肉じゃってめちゃ付いちょるのに。――もぉ、実篤さん、いきなり訳分からんこと言うて笑かさんちょいて!」と吹き出されてしまう。
(いや、訳分からんこと言ーちょるん、くるみちゃんの方っ!)
と頭の中でツッコミを入れている実篤をよそに、くるみが続ける。
「ひょっとしていつもうちに聞いてきていらした〝強面云々〟も、本音は女の子顔が隠せちょる?って確認じゃったりしました?」
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