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(あー、マジで凄く恥ずかしいんじゃけど!)
実篤より20センチ以上背の低い彼女は、気まずそうに視線を逸らせた実篤の様子に気付いたと同時、スッと目に生気が戻ってきた。
そうしてすぐ眼前の実篤を見上げると、弾かれたように自分のそばにあった白い軽バンに向き直る。
大きくリアハッチが開かれたままの車に作り付けられた木製の棚から、寂しげにポツンと取り残されていたチョココロネを迷わず手にして実篤の目の前に戻って来てから、
「助けてくださって有難うございました! えっと……それで……もしよろしければっ」
チョココロネを持つ手が実篤の方へ突き出される。
「――き、きっとお忙しくされちょっちゃったんですよね?」
この辺の言葉で「お忙しくなさっていらしたんですよね?」という意味の敬語で言いながら、まだ涙の乾き切らないウルリと潤んだ瞳で実篤を見つめてくる。
「お腹、空いちょってなら是非」
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