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そんなくるみの屈託のない表情を見て、実篤は後者を選ぼう、と思った。
くるみは家族を亡くしてそんなに間がない。
彼女は案外、実篤のなかに、〝自分によくしてくれる身内的立ち位置〟を求めているのかも知れない。
「いや、何でもないよ。行こっか」
どこへ?と思いながらもそんなことを言って、実篤は自分自身の気持ちを切り替えるように目の前のくるみを急かしてみた。
これ以上見つめられたら、不埒な思いに駆られてくるみのことをギュッと抱きしめてしまいたくなる。
さすがにそりゃぁマズイじゃろ、と思った実篤だ。
(よし! 今日の俺はくるみちゃんの父親……もとい兄ちゃんじゃ!)
一瞬父親代わりを演じようとして、さすがにそれは年の差を痛感させられまくりで悲しかったので兄に訂正して――そう、自分に言い聞かせた。
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