3.月が綺麗ですね

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 そんなくるみの屈託のない表情を見て、実篤(さねあつ)は後者を選ぼう、と思った。  くるみは家族を亡くしてそんなに間がない。  彼女は案外、実篤(さねあつ)のなかに、〝自分によく(よぉ)してくれる身内的立ち位置〟を求めているのかも知れない。 「いや、何でもないよ。行こっか」  どこへ?と思いながらもそんなことを言って、実篤(さねあつ)は自分自身の気持ちを切り替えるように目の前のくるみを()かしてみた。  これ以上見つめられたら、不埒(ふらち)な思いに駆られてくるみのことをギュッと抱きしめてしまいたくなる。  さすがにそりゃぁマズイじゃろ、と思った実篤(さねあつ)だ。 (よし! 今日の俺はくるみちゃんの父親……もとい兄ちゃんじゃ!)  一瞬父親代わりを演じようとして、さすがにそれは年の差を痛感させられまくりで悲しかったので兄に訂正して――そう、自分に言い聞かせた。
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