3-2.月が綺麗ですね:こぼれ話

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(キスしちゃいたい……)  そんなことを思ってしまった。 (うち、実篤(さねあつ)さんのこと、好きなん?)  今更のように自分の想いに気づいてしまった。  目の前の実篤(さねあつ)も、自分のことを憎からず思ってくれている気がするのは自惚(うぬぼ)れだろうか。  二人きりで室内にいるのに襲いかかってくるような素振りがないのは、実篤(さねあつ)がくるみのことを妹のように可愛く思っているからなのか、それとも自制心を総動員してくれているのか。  後者じゃったらええな、とか色々考えていたら、何だか実篤(さねあつ)の気持ちを知りたくなってしまったくるみだ。 (このままうちがキスしたら、実篤(さねあつ)さん、どんな反応するんじゃろ?)  そんな小悪魔なことを考えていたら、 「あ、あの……くるみちゃん?」  実篤(さねあつ)に声を掛けられて、ビクッと身体が飛び跳ねてしまった。 (うち、何ちゅう大胆なことを……)  元々思い立ったらアレコレ動いてしまう方ではあるけれど、それにしたって自分から男性を襲おうとするなんて、さすがにありえんじゃろ!と自分で自分が恥ずかしくなった。  実篤(さねあつ)の手を握ったままのくせに、何処かへ走り去ってしまいたい衝動にかられて、彼の手を引いたまま無意識に小走りになったら、背後から 「ちょっ、くるみちゃん、俺、目ぇつぶっちょるけん、結構怖いんじゃけどぉ〜!」  と情けない声で呼びかけられて。 (あ〜、ホンマこの人、凄く(ぶち)可愛いくて(かわゆーて)堪らん(やれん)のじゃけど!)  と、胸がキュンキュンのくるみだった。
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