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「残念じゃったねぇ、宇佐川くん。それでもあの子ンことは社長が最初っから凄い贔屓にしちょったんバレバレじゃったんじゃけ、横恋慕する気なんじゃったら急がんといけんかったのは分かっとったじゃろーに。長い事モタモタしよるけん遅れを取るんよ」
野田の辛辣な言葉に、宇佐川がシュンとする。
「そりゃあそうなんですけどぉ〜。年齢的に考えても絶対自分に軍配が上がるはずじゃし、焦らんでも大丈夫かな?とたかをくくっちょったんです」
と溜め息を落とす。
「ちょっ、宇佐川、お前、そんなこと思うちょったんか」
思いもよらぬところに伏兵がひそんでいたことに今更のように驚かされた実篤だ。
宇佐川には悪いが、彼がリアクションを起こす前にくるみに告白できて良かった!と心底思ってしまった。
(いや、けどあの場合はくるみちゃんが動いてくれたけん言えたんか)
およそひと月ばかり前の――。十五夜の晩のアレコレを思い出してみると、割と情けなくもあり。
でもそう考えてみたら、(宇佐川が先に動いたけぇ言うて、くるみちゃんは俺にしかなびかんかったんじゃないん?)とも自惚れたくなった実篤だ。
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