4-2.ハッピーハロウィン!―中編―

2/16

897人が本棚に入れています
本棚に追加
/470ページ
 社屋の戸締りとセキュリティシステム始動の操作をして田岡や野田と別れた実篤(さねあつ)とくるみは、店舗横の来客用駐車場とは違う、少し離れた場所にある従業員向けの駐車場へ向かった。  実篤(さねあつ)にはよくわからないけれど、くるみが言う〝移動先〟へは、実篤(さねあつ)の車を使うことになったのだ。 「(さむ)うない?」  ロングコートを羽織っているとはいえ、時節の挨拶で「秋冷(しゅうれい)(こう)」から「晩秋(ばんしゅう)(こう)」へ切り替わるあたりの肌寒い季節。  日中はそうでもないけれど、日が落ちると空気がグッと冷え込むのを体感するようになる時分だ。  女の子は身体を冷やすと良くないと妹の鏡花(きょうか)がよく騒いでいたのを思い出して、すぐ横を歩くくるみをいたわったら「大丈夫です」と小さな声が返る。  実篤(さねあつ)もさすがにオオカミ男(あの姿)のまま外を彷徨(うろつ)く勇気はなかったので手袋と耳を外してコートを羽織ってはいるけれど、もしもくるみが寒いと震えるなら、上着を脱いで貸すことも躊躇(ためら)わない覚悟はあった。
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!

897人が本棚に入れています
本棚に追加