897人が本棚に入れています
本棚に追加
/470ページ
***
一応社長と言うことで、「そこそこ見栄えのする車に乗らんにゃーいけんぞ」と父親に言われて、そんなに興味はないけれど、実篤はグレーメタリックが綺麗なCX-8に乗っている。
マツダ車を選んだのは、高校時代の友人がマツダの営業をしていたからその付き合いで。
実篤としては、もっと小さくて小回りのきく軽自動車で充分じゃろと思っていたりするのだけれど、上に立つ者にはハッタリも大事だと言われては無下にも出来ず、従った感じだ。
「強面で有名じゃった栗野が社長かよー」
とか何とか揶揄いながらも、街乗りでの快適性を重視した都市型向けと言われるクロスオーバーの大型SUV車を買うと言った実篤に、その友人は終始笑顔で接してくれたのだ。
助手席に乗り込んでシートベルトを付けるなり、ずっと黙り込んでいたくるみがガバリと頭を下げてきた。
「ごめんなさい、実篤さんっ、うち……」
先程も事務所内でくるみが自分に謝ってきたのを思い出した実篤は、エンジンを掛けてエアコンの設定温度を少し上げたところで手を止めると、くるみの方へ身体ごと向き直った。
最初のコメントを投稿しよう!