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くるみの間違いをしっかりきっかり正してあげたかった実篤だったけれど、途端涙目で見上げられて、
「うちにとっては可愛いく見えるんじゃけぇ、仕方ないじゃないですかっ。お願いじゃけ、否定せんちょって?」
と言われてしまっては、それ以上何も言えなくなってしまうではないか。
「……ごめん。もう言わんけ、許して?」
ややして、しゅん……となって謝ったら、「ほら、やっぱり凄く可愛いです」と涙目で見上げられた。
(いやっ! 可愛いのは絶対くるみちゃんの方じゃけ!)
心臓が痛いぐらいくるみのウルウルな目にノックアウト寸前の実篤だ。
「実篤さんはあそこでは社長さんで……責任がある身なのに……うち、嫉妬に駆られてお仕事の邪魔してしもうて……ホンマ恥ずかしいです」
仕事は終わっていたけれど、きっと戸締り云々をおろそかにさせそうになったことに対してくるみは謝りたいのだと実篤は理解した。
「ええんよ。気にせんちょって? ――それに俺、ちゃんと踏みとどまれたじゃん? 謝るぐらいならそこを褒めて欲しいんじゃけどな?」
言って、実篤はくるみの手をギュッと握る。
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