5-1.オオカミとウサギさん*

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実篤(さねあつ)さっ、苦し……っ」  くるみが小さな声で抗議して、慌てて腕の力を緩めて――。 「こちらこそ、よろしくお願いします」  実篤(さねあつ)はくるみの耳元でそうつぶやいた。 (えっと……この首んトコの紐を(ほど)いたらええんじゃろうか?)  女の子の服にうとい実篤(さねあつ)は、とりあえず目の前にある蝶々結びにされたホルターネックの紐を引っ張りながらそんなことを考える。  どうやらパッと見た感じ、どこにもファスナーはないようで。  前についた三つのボタンも飾りボタンの様だし、それを外したからといって前が開くと言う感じでもない。というか、そもそもただ縫い付けてあるだけで、外せるボタンではないみたいだ。 「あの……くるみちゃん、これ……」  結局情けなくも、「脱がし方が分かりません」とくるみ本人にSOSを出す羽目になってしまった実篤(さねあつ)だ。 (八雲(やくも)じゃったら、こんな変わり種の服が相手でも卒なく脱がしてしまえるんじゃろうか)  そんなどうでもいいことまで考えてしまう始末。
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