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「スリッパ、変えてくれたんじゃ」
「はい」
実篤が初めてここへ来た十五夜の夜、くるみに出されたのは踵が落ちてしまうほど小さなサイズのワンコのモフモフぬいぐるみ風スリッパだった。
けれど、いま実篤が履いているのは、オオカミの顔デザインの灰色モコモコ仕様。
サイズも実篤に合わせてちゃんと大きめで、しっかり足を包み込んでくれている。
そうして何を隠そうこれ、裏面がモップになっているお掃除スリッパなのだ。
くるみもピンク色のウサギタイプの同じスリッパをはいているのだが、こちらはくるみの足に合わせて小さめサイズになっている。
これ、実はどちらも今日おろしたてホヤホヤのスリッパだったりする。
というのも――。
「実篤さんからの誕生日プレゼント、実用的で気に入っちょります」
本当は、くるみの分だけと思っていたのだけれど、くるみが「いる物ですし、せっかくじゃけぇお揃いがええです」とニコニコするので、どちらも彼女に選んでもらって、通販サイトMitsurinの実篤アカウントの買い物かごに放り込んでもらった。
結局今日に間に合わせたかった結婚指輪は、デザインからこだわったオーダーメイド品にしてしまったため、納期に時間がかかると言われて持参できなくて。
結果として、くるみからは何個もプレゼントはいらないと釘を刺されていたけれど、スリッパを買ったのは良かったんじゃないかと思った実篤だ。
くるみも、アクセサリーみたいに値が張るものじゃない生活雑貨だったからか、案外すんなり実篤の提案を受け入れてくれた。
――
エッセイ778頁(https://estar.jp/novels/25912145/viewer?page=778)に、このスリッパの参考画像があげてあります。
もし気になられましたら♥(うなの)
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