始まりの日

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 次の日、千鶴は放課後のバスケ部の練習を覗きに行った。彼の名前だけでも知りたいと思ったのだ。  だがバスケ部は想像以上に人気があり、たくさんの女子が集まっていた。会話を盗み聞きしていると、何人かカッコいい男子がいるようだった。  昨日私を助けてくれた人もその中の一人なのだろうか。  千鶴は体育館の二階にある放送ブースに行くが、鍵がかかっていたため入れず、他の女子に紛れながら彼を探す。  忙しなく動く人の影。その時、 「山本ー! パス!」 という声が耳に届く。  あっ、この声だ。すぐにわかった。  千鶴はその声の主を目で追っていた。身軽に動きまわり、周りにパスをたくさん回している。  千鶴は小学校の時の同級生を見つけると、近づいて声をかける。 「佳奈ちゃん佳奈ちゃん」 「あれっ? 千鶴ちゃんじゃん。珍しいね、こんな所にいるの」 「うん、ちょっと偵察」 「偵察? なんだそりゃ」 「あの、バスケ部のメンバーを教えてほしいです。佳奈ちゃんは詳しい?」 「まぁね。イケメンなら任せてよ!」  なんて頼もしい。千鶴はポケットからメモ帳とボールペンを出すと、いつでも準備OKという風に構える。 「あっ、今コートにいる人だけでいいので」  本当は知りたいのは白のゼッケンの四番だけど、それだけ聞いて怪しまれたくないので全員の名前を聞くことにした。  赤チームの説明が終わり、白チームに入っていく。 「白の四番が、副部長の田端大和(たばたやまと)先輩。結構性格はきついし口も悪いんだけど、あの見た目と身軽さで女子からは人気が高いんだよ」  田端大和先輩……。名前がわかって嬉しくなる。  その後も佳奈はメンバーの説明をしてくれていたが、千鶴の目は大和の姿に釘付けになって、ほとんど聞いていなかった。  昨日は暗くてわからなかったけど、確かにすごいイケメン。口は悪いみたいだけど、きっとただ悪いだけじゃないよね。だとしたらあんな風に助けてくれないはず。  漫画に出てくる王子様を見つけた気がして、千鶴はふふっと笑った。
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