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大和はポケットからスマホを取り出し、写真のフォルダを開く。
「これ見て」
それは便箋にびっしりと書かれた手紙の写真だった。千鶴はそれを見た瞬間、目が泳ぎ出す。
「これさ、俺が中学の時にもらった手紙なんだ。大事にしてたから、本体は家に置いてあって、こうして写真に撮って持ち歩いてる」
千鶴は明らかに動揺している。ソワソワしながら、視線を逸らした。
「これ書いたの、千鶴だろ?」
「し、知らないよ……。ほら、私最近……」
「今朝中学の同級生に会ってさ、そいつがお前のこと知ってたよ」
千鶴は黙り込む。地味な私がバレてしまう。
「なんで隠すの?」
「……だって……地味だった頃の私を知られたくなくて……」
「なんで? 俺はお前のこの手紙のおかげで変われた。あの頃は生意気だったなぁとか思うけど、この手紙が俺を肯定してくれたから今があるって思う。……千鶴なんだろ?」
千鶴は黙って頷いた。
「まさか、この頃から俺のこと見てた?」
千鶴は頷く。
「マジか。ずっと疑問だったんだけどさ、俺お前に好かれるようなことした?」
千鶴がただカッコいいだけで好きになるタイプでないことはわかっている。それなら千鶴の想いの全てを知りたかった。
すると千鶴は下を向いたまま口を開く。
「中一の三学期だったかな。部活が終わって帰る時に、橋のところで落とし物を探してるおばあさんがいたの。放っておけなくて一緒に探したんだけどなかなか見つけられなくて困っていたら、大和くんが自転車で通りかかって声をかけてくれた」
「……そんなことあったっけ?」
「あったの。でね、校則違反の携帯を取り出して一緒に探してくれて、それからすぐに見つかったんだ。私がお礼を言ったら、携帯の口止めだけして行っちゃった」
千鶴が嬉しそうに話すから、それが大切な思い出であることが伝わってくる。
「まさかそれがきっかけ?」
「それから大和くんが気になって、ストーカーみたいになっていろいろ観察してた。ずっと見てたから大和くんが口下手だけど、すごく優しい人なんだなぁってわかったの」
「お前、自分をストーカーって……。っていうか何年だよ……長過ぎだろ」
その言葉を聞いて千鶴は笑い出す。
「だよね。しかも話したのはその時だけだったし。でも不思議と気持ちはブレなくて」
「……あのバスケ部のケンカも見てたんだよな?」
「うん。でも私は運動部じゃないから詳しいことはわからないし、ただ大和くんはまた口下手だし。それなら大和くんの良いところを伝えたいって思ったんだよね」
「……あの時はどう考えても俺が悪かったから、誰も味方になってくれなかった。学校に行くのも嫌で、でも下駄箱に入ってた手紙を読んで、俺のことをわかってくれてる人がいるんだって思ったら嬉しくなった。しかも昼の放送であの曲を流したのも千鶴だったんだろ?」
「うん、元気付けたくて」
すごいな、あの頃から千鶴はずっと俺を守ってくれてたってことになる。
「大学入ってからはまわりにチヤホヤされて、ちょっと調子に乗ってたんだよな。付き合いやすい軽い男の田端大和の出来上がり。でも千鶴が俺を見つけてくれたから、ちゃんと戻ってこられた」
その時の大和の笑顔があまりにもかわいくて、千鶴は彼に触りたい欲求が募る。
迷いながら、千鶴は立ち上がると大和の膝の上に背を向けて座る。そして彼の手を自分のお腹にまわす。
突然のことに驚きつつ、千鶴が甘えてきたことが無性に嬉しかった。
「大和くん、頭良すぎなのよ! 偏差値高すぎて一緒の高校は無理だったし、大学受験は猛勉強だったんだから」
鼻腔をかすめる千鶴の香りに、大和は体の芯が疼くのを感じる。
「でも俺のために頑張ったんだ?」
「……ラストチャンスだと思ったから……。大和くんの近くに行きたかった、喋ってみたかったの……」
大和は後ろから千鶴の首筋にキスをする。ニットの裾から手を差し入れ、千鶴の胸に触れる。ヤバい……もうそろそろ抑えが利かなくなりそうだ。
振り返ろうとした千鶴の顔を自分の方に向かせ、キスをした。この甘い匂いに俺はもうずっと酔ってるみたいだ。
「千鶴……今すぐしたい….」
「でもここ学校……」
「俺に跨って……千鶴ロンスカだから隠れるよ」
千鶴を自分の上に足を開いて座らせると、スカートの裾から手を差し入れる。腿を何度も撫で、大和の手は千鶴の敏感な部分に触れる。
千鶴の口から熱い吐息が漏れ、大和の耳元で小さな声をあげる。
大和の指が千鶴をゆっくり溶かしていく。千鶴の息遣いが上がり、とろんとした表情で大和にキスをする。何度も舌を絡めていく。
「はは……こういうやり方もあったんだ……。お互い実家だし、なかなか二人きりになれないからさ……」
「でも本当はこんな危ないエッチ……ダメなんだからね….」
「はいはい….」
大和は千鶴にキスをする。
「好きだよ、千鶴……。俺のこと好きになってくれてありがとう」
「……大和くんなんて、私だけ見ていればいいのよ……私だけ好きでいればいい……そうしたら死ぬまで愛してあげるんだから」
大和はびっくりして顔を真っ赤にする。
「えっ、それってプロポーズ……?」
「えっ! ち、違うもん! それは大和くんからするんでしょ!」
大和は笑う。プロポーズする前から返事もらったようなもんじゃん。
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