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職場の先輩で、とても尊敬している女性がいる。
仕事が速く、機転も利いて、社内で一目置かれているような存在だ。
ここ半年ほど、ある案件でその人と組んで仕事をすることが多かった。
話せば話すほど、この人はすごい、自分もこうなりたい、そんな気持ちが膨らんでいった。
そして、自分が本当にやりたいことは何なのか、それを実現するために何をしていけばいいのか、見えてくるようにもなった。そんな時に、その人から言われた。
「今すぐじゃなくてもいい。けど、いつか一緒に別の仕事してみない?ここから離れて。私は、あなたの力が欲しい。あなたのやりたいことと、私のやりたいことって、話を聞いているとリンクしてると思うの」
嬉しかった。ここ最近で、何よりも嬉しい出来事だった。そして気付いた。
ずっと見て見ぬ振りをしてきたけれど、僕の中で、彼女のことを考える時間がどんどん増えてきている。もっともっと、彼女のことを知りたい、近付きたいと思っている自分がいる。
もう、無視できなくなっていた。僕は、彼女のことが好きだ。仕事ぶりだけを見て言ってるんじゃない。一人の女性として、どうしようもなく魅力を感じてしまっているんだ。
訥々と、怜は語った。
そして私は、成す術もなく、ただ座って聞いていた。身じろぎ一つできなくて、このまま石になってしまいそうだと思った。
普通なら、逆上してもいいところなんだろう。でも、何故だかそれができなかった。
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