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「こんなことを打ち明けた後で、何を言っても言い訳に聞こえてしまうのかもしれない。でも、僕は確かに澪加のことも大事なんだ。だからずっと一緒にいた。今でも、僕にとって澪加は特別だって思ってる。そんな相手に、不誠実な態度は取りたくないって思った。どっちつかずは、絶対に駄目だ。あの人…先輩のことを選ぶなら、澪加とはけじめをつけなきゃいけない。自分勝手なことを言ってるっていうのは、分かってる。いくらでも罵ってもらって構わない。どんなに綺麗事を言ったって、僕が澪加を裏切ったことに変わりはないんだ。本当に、ごめん」
怜は深々と頭を下げ、そしてそれを上げようとはしなかった。
怜の頭頂部をぼんやりと見つめながら、相変わらず猫っ毛な髪の毛、なんて場違いなことを私は考えていた。
怜は一向に頭を上げない。私が口を開くまで、ずっとそうしているつもりなのだろう。
石のように硬く、そして鉛のように重くなった身体を、私は椅子から離した。
何も言わずに立ち上がり、そのまま寝室に入って行った。それが、私にできる精一杯の抵抗だった。
いや、違う。ただの現実逃避だ。
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