85人が本棚に入れています
本棚に追加
あれから一週間。
一か月ほど滞在していたルーカスの屋敷を離れ、スタッドは自分の屋敷に戻ってきていた。今は、屋敷の書庫で分厚い本と格闘している。この世界についての情報収集をしているのだ。前世の記憶のおかげで、大卒分の教養を手にしたことで理解力が大幅アップした。したがって、欲望の赴くままに野望を実現にするために情報を集めて来るべき時のために必要な素養を手にしようというわけだ。
特に、フェロモンやアフティ―について学ぶことは最優先事項である。
そして、「魔力」。
今まであまり考えもしなかったが、この世界は前世のように電気やガスで明かりをつけたり、火をつけて料理をしたりするわけではない。基本は魔力を動力源とする魔道具を使用するが、魔道具はそこそこ値が張るようで貧しい層の人たちは今でも薪や蝋燭を使って生活しているらしい。
魔法なんて子どもに聞かせるおとぎ話でしかないと思っていた。実際、もう少し小さいときに親に寝物語として聞かされていたくらいだ。しかしその昔、何百年も前の話だが、この世界にも魔物と呼ばれる人に害をなすものが存在し、それらに対抗する手段として実際に魔法が使われていたという。その後の歴史の中で魔法はほとんど廃れてしまい、今では機械を動かしたりするエネルギー、動力源として魔力を使用するやり方だけが残ったのである。前世でいうところの電気のようなものだ。
人間は多かれ少なかれこの魔力を保有し、それは生体エネルギーの一つとして体内を循環している。これは身体を動かすのに必要なエネルギーで、特に怪我をしたときは、魔力を活性化させることで自己治癒力を高め、傷を早く治すことができる。そのためこれを作用させることで、アフティ―は相手の体内の組織構造を変え、男性でも妊娠できるように子宮などを生成させているのではないかというのが、最近のアフティ―に関する研究成果である。
つまり、魔力を大量に含んだ精を相当量体内に取り込めば、皇帝フェロモンで活性化された女性フェロモンにより妊娠すると思い込んだ身体は、否が応でも順応するために身体を作り変えるということだ。
また、アフティ―の精は一般男性に比べて、そこに含まれている魔力量が圧倒的に多い。したがって、アフティ―の精の動きは活発でより長く活動できるため、相手を妊娠させる確率が格段に上がる。
愛する者を孕ませるためには、フェロモンだけでなく魔力も重要なのだ。
フェロモンも魔力も、その人が生まれた時点で保有できる量は決まっている。フェロモンは10歳までに最大量まで少しずつ増えていき、精通を迎えることで開花する。その後、それらは性的興奮の高まりに応じて分泌される。
一方魔力は、生まれた時点から最大量を保有するため、基本的に増えることはない。人々は普段これらを無意識的に使用しているが、もし意識的に使えるようになって、他人に作用させられるようになれば、より強く妊娠を促せるかもしれない。
現時点で、フェロモンをどうこうすることはできないが、魔力を意識的に使えるようにするためにできることがあるかもしれない。
この日から、スタッドは魔力制御を習得するため、鍛錬を開始した。
最初のコメントを投稿しよう!