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高位の子息様方にあてがわれた4人部屋は広く、豪華で侍従付きだ。共同スペースを挟んで、左右に2部屋ずつ個室が備え付けられている。バスルームなどは共通だが、食事は食堂なので共同生活と言えるのかどうか・・・。
まあ、決まったものはしょうがない。ルーカスの安全が確保できると思えば、どうということはない。良からぬ蟲が寄り付かなければ、どうでもいいのだ。
「式典などで面識はあると思うが改めて、レジア・マクシミランズだ。これから長い付き合いになるだろうし、同室になるのだから気にせずレジアと呼んでくれ。敬称も敬語も必要ない。一同級生として接してほしい」
レジア・マクシミランズ、この国を治めるマクシミランズ王家直系の第二皇子。ルーカスとは似ても似つかない王族特有の透明感のあるブロンドの髪と、淡いピンクダイヤモンドの瞳を持つ美人さんだ。非常に落ち着いており、他人に対して冷たい印象だったが、予想外にも気さくで男らしい自己紹介を受け、仲良くやっていけそうだなと内心胸を撫で下ろした。
「アスピード・ロペスティアードです。レジア同様、気にせずアスピードって呼んで。もちろん敬称も敬語もいらないよ。仲良くしてね」
アスピード・ロペスティアード、王家を支える5大貴族の一角、主に国防や治安維持を担う防衛院の現トップ、ロペスティアード公爵の一人息子。彼自身の身体能力も高く、将来を有望視されている逸材の一人だ。ダークグレーの髪に、シトリンの瞳。まるで狼のような色合いの容姿をした、社交的で人好きのする少年だ。
「ルーカス・アレクサンダーです。これからよろしく」
二人と交流のあるルーカスが手短に挨拶を済ませる。
「スタッド・グランバルトです。皆様とご一緒できることを光栄に思います。至らないことも大いにあるともいますが、よろしくお願いいたします」
緊張で背筋がピシッと固まったまま、敬礼する。
「気にするな」
「そうそう。そんなに緊張してたらこれから大変だし、すぐ疲れちゃうよ。気楽に行こッ!」
レジアは呆れて、アスピードはニコニコと笑いながら肩をポンと叩く。ルームメイトの顔面偏差値と育ちの良さから放たれるキラキラが眩しくて目がつぶれそう。
それに、今まで通りルーカスにべったり張り付くことは難しそうだ。膝枕で昼寝をしようものならレジアから冷ややかな視線を向けられること間違いなし。仕方がないが、ある程度の我慢は必要だ。ストレスが溜まるのは免れないし、この先いつまでも一緒というわけにもいかないのだから、今から慣らすための訓練だと思い込もう。スタッドは自分にそう言い聞かせることにした。
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