3.王立アカデミー入学

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その後、レジアとアスピード落ち合い、何ごともなく夕食をとった。だがレジアとアスピードの二人はどことなく落ち着かないようだった。 まあ、彼らが部屋を出るときには膝枕で仮眠、食堂前で落ち合ったときには仲良く手を繋いでいたのだ。友達にしては近すぎる距離感を見れば困惑するのは当然だし、まだ幼い彼らがドキドキして落ち着かない気持ちになるのは想像にたやすい。 それから部屋へ戻り、それぞれの自室で思い思いに時間を過ごす。スタッドもお風呂の順番が回ってくるまで、日課の魔力制御の鍛錬を始めた。 お風呂の順番は、話し合いで爵位が高い順となったので、一番風呂はレジア、次にアスピード、その次にルーカス、そして爵位の一番低いスタッドが最後と決まった。最初は、順番は決めずそれぞれが入りたいときに適当に、と言われたが、さすがに王族であるレジアを差し置いて先に風呂に入ることはできないと全力で主張したため、無難に爵位順と決まった。 寮には大浴場も備えられているためそちらに行ってもいいのだが、確実にルーカスも付いてくるだろう。それはいけない。絶対に阻止しなければ。 ルーカスの素肌が他の男どもに晒されると思うと、おかしくなりそうなので絶対に連れて行かない。絹のような透き通った肌、天使のように愛らしく無垢なその姿を自分以外が見るなど言語道断。他の誰かがうっかり目に入れようものならその瞬間、光の届かない闇の世界へご招待だ。ただし、お世話係をはじめとした使用人は例外である。邪な気持ちを抱いた瞬間、即解雇だが。 一時間ほど経った頃、トントンッと子気味良いノックが響く。ガチャッとドアを開けてルーカスが顔を出した。 「スー、お風呂だって」 「わかった」 短く返事をして、タオルと着替えを持ってバスルームへ行く。その後ろを同じくタオルと着替えを持ったルーカスが付いてくる。 「・・・・・」 「「・・・・・・・・・・・・・」」 共有スペースでメイドが入れたお茶を飲んでいたレジアとアスピードの視線も付いてくる。 振り返ればルーカスがキョトンとした顔でこちらを見ていた。 「どうしたの、スー」 「ルーカス、まだ入ってないの?」 「うん。だから今から入るんでしょ?」 「一緒に?」 「うん。何言ってるの。今更でしょ。ほら、早く入らないと遅くなっちゃう」 ほらほらとスタッドの向きを変え、背中をグイグイ押してバスルームへと入っていくルーカス。 その後ろ姿を呆然と見送ったレジアとアスピード。ルームメイトの強烈なスキンシップ、ラブラブっぷりを見せつけられた二人は、後学のためとはいえ、これからの生活が先行き不安に思える初日となった。そして翌日からも絶えずスタッドを甘やかし甲斐甲斐しく世話を焼くルーカスに、この二人はそういうものなのだと思い込み、共同生活三日目にして悟りを開いた二人であった。 そんな初日から一週間。 無事授業も始まり、穏やかで蜜月のごとく糖度過多な時間はゆったりと過ぎていった。
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