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3.王立アカデミー入学
それから約一年。
今日から新天地での生活がスタートする。
「新入生諸君、入学おめでとう。今日から君たちは卒業するまでの約10年間をこの学び舎で過ごすことになる。お互いが切磋琢磨し、より良い未来が拓けるよう日々精進してくれることを願っている。」
王立アカデミー、この国の8歳から18歳までの王侯貴族や、一般市民の中でも富裕層の子息が集う学び舎である。王都の北側に位置する全寮制の学園で敷地面積も広く、校舎以外にも三つの寮や図書館、闘技場や庭園など様々な施設を備えている。
授業は選択制で、各自の能力や適性、将来の希望等に合わせて履修し、16歳までで一般教養課程を修了する。17歳からは騎士や軍、文官、経営者などのコースに分けられ、各分野をより専門的に学ぶ専門教養課程があり、2年間の就学を経て卒業となる。時折、フェロモン検査で優性と判断された者が奨学生として編入してくるが、彼らは家業を継ぐため専門教養課程には進まずに卒業することが多い。
そんな学園に今日、俺たちは入学した。
授業のことも気になるが、俺にとって最重要なのは寮生活である。
基本的に寮の部屋は、第4学年までは3~4人部屋、第5~7学年は2人部屋、第8学年は1人部屋、第9~10学年はコースごとに異なる。例えば、騎士や軍コースは集団行動が必要不可欠なので複数人での共同生活だし、文官や商業コースは、家業を手伝いながら実務経験を得るため王都近郊の屋敷から通う者が多い。ただし、侯爵家以上の子息には初年度から専用の個室が与えられる。俺は伯爵家なので当然相部屋だが、ルーカスの家は侯爵家なので通常なら個室になる。
しかしルーカスが、
「スタッドと同じ部屋がいい」
と希望してくれたため、俺たちは相部屋だ。
俺たちは親友だし、他意はないのだろうがすごく嬉しい。それに同室なら、エッチないたずらし放題だし、本番前にあれこれ仕込み放題・・・などと浮かれたのは束の間、通常の共同生活というものを経験したいというルーカスの一言で、俺たちは4人部屋となった。
残り二人のルームメイトは、この国の第二皇子レジアとその側近候補かつ乳兄弟のアスピードだ。ルーカスが皇子のはとこであり、寮の相部屋の話を聞きつけた国王様が後学のために息子にも共同生活を学ばせようとした結果、この国で最も尊い血筋のお方がルームメイトとなった。皇子と全く面識がないわけではないが、何とも胃が痛い話である。
頼みの綱であるもう一人のルームメイトのアスピードも公爵家の嫡男で、なんならルーカスより爵位は上のお家柄なのだ。何でも王妃様と公爵夫人は親友で、とても仲がいいんだとか。
そんな高位のルームメイトが3人。誰が見ても分不相応にしか思われない、場違い感が肌を突き刺している。悪意を感じられる組み合わせだ。誰かの恨みを買うようなことをしただろうか。いや、まだしていないはずだ。大丈夫。
いっそのこと二人も俺のハーレムに・・・と思ったが、そんな危険なことはできない。なにより、レジアがあまり好みではない。眉目秀麗で誠実かつ真面目そうな、硬派な印象を与える顔立ちだが、王妃様に似た少し甘めで優しい表情をする。嫌いではないが、恋人より友達にしたいタイプだ。
それにどちらかといえば美人なレジアより、第一皇子のレックス様の方が好みなのだ。男前な顔立ちに、雄臭さを感じられるところがいい。抱けるものなら、抱きたい人である。
アスピードはいい感じに育ちそうなので射程圏内にはなるだろう。しかしこの男、少々危険なにおいがするので手を出すのはやめておこう。レジア第一主義の番犬。そのうちレジアはこいつに喰われるだろう。
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