私は留守番

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私は留守番

     朝から曇り空が続いた一日も、そろそろ終わる。そんな夕方の出来事でした。  いつものように私は、彼の部屋で過ごしていました。彼が仕事に出かけている間、一人で留守番しておくのが、私の午後の日課です。  本当は炊事や洗濯、部屋の掃除など、彼のために家事もこなしたいところですが……。私が勝手にやったら彼が嫌がる、というのは私にも理解できています。だから何もせず、ただ彼の部屋でボーッと過ごすのでした。  大好きな彼の、残り香が漂う部屋です。  何もやることがないからといって、退屈は感じません。  ただ部屋の空気を吸うだけで、幸せな気分になれます。  時には彼のベッドでゴロゴロすることもあります。自分でも「ちょっと変態じみてるかな?」と思うのですが、あの気持ちよさは格別ですね!  でも毎日ベッドにお邪魔するのは、さすがに彼に悪いという気持ちがあるので、今日は我慢。部屋の真ん中にポツンと座って、なんとなく室内を見回していたら……。 「あら!」  壁際に並んでいる、男の子向けのお人形さん。いわゆる美少女フィギュアの一つが、昨日とは微妙に位置を変えていました。 「ふふふ……。彼ったら、いい歳して、昨晩お人形さん遊びしてたのね?」  銀色の長髪と、黒いゴスロリ衣装。彼が好きなアニメのサブヒロインです。物語のメインヒロインではないし、主人公の恋人役でもありませんが、彼がイチオシのキャラクター。  冷たい目つきがそそられる、と彼は言っていました。  もちろん私に対しての発言ではありませんが、でも大好きな彼のことなので、その程度は私も知っているのです。 「私よりも、このお人形さんの方が好きなのよね。ちょっと()けちゃうわ」  そう思って、ふらふらと美少女フィギュアの方に近づいて……。  うっかり私は、落として壊してしまったのでした。    
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