開幕

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開幕

 眼鏡を(うば)わなかったことが、看守を(つと)めた彼の不幸であった。  (くだん)の青年は、眼鏡の(つる)を首から生やし、(あお)のけに倒れて絶命している。  その首から吹き上がった紅の飛沫(しぶき)が、私を汚してしまった。  しかし、これに関しては(いた)し方無いだろう。  復讐劇(ふくしゅうげき)緞帳(どんちょう)は、真紅(しんこう)であるべきだ。  もっとも下賤(げせん)な青年のものでは、真の紅とは言いにくいであろうがな。  名も知らぬ看守の君よ、隼人の理となる行動をとったことが間違いであった。地獄で悔いるが良い。  もし罪を(そそ)ぎたいと望むならば、手を下した私でなく、私を(おと)めた隼人に対して怨念(おんねん)を向けたまえ。
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