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「ッ…――! ごめんね、海里! 私がワガママ言って誕生日プレゼントなんか、ねだらなければ良かったのに! ただ私のそばに居てくれるだけで良かったのにホントにごめんねっ…――!」
堰をきったように泣きだすと目の前の彼に謝った。すると海里は私を優しく抱き締めた。
「バカだな……。そんなこと言うなよ、大事な彼女の誕生日を忘れる彼氏がいるかよ。彩花は俺にとって、世界中の誰よりも大切な女だ!」
「海里っ……!!」
「――ごめんな、あの時お前に会いに行けなくて」
「うんん…! いいの、もういいの…――! だって今、海里が私の前にいるからもういいの! 愛してる海里、ずっとずっと……! 私が歳をとっていつか、おばあちゃんになっても、ずっと貴方だけを永遠に愛してる…――!」
「彩花……」
私は彼の腕の中で泣きながら想いを伝えた。例え、これが一瞬の幻のような刹那でも、もう一度彼に出会えた奇跡は、私の中ではかけがえのない大切なモノになっていた。
「もう、平気なのか……―?」
「うん…! 私は独りでも平気だよ…――!」
「そうか……!」
「いきなり目の前に現れてごめんな」
「うんん、海里の顔をもう一度見れて幸せだった。きっとこれは気まぐれな神様からの贈り物ね」
ゆっくり回っていた観覧車は地上に着いた。その時には降っていた雪も止んでいた。私はわかっていた。これが最後だって事を。観覧車から降りたらきっと、彼とは永遠に会えない。私は扉の前に佇むと肩を震わせて泣いた。
「彩花……」
「っひっ、私も、私も…――! わたしも海里と一緒にずっと居たいよぉっつ! !」
「彩花っ…――!」
「お願い、海里! 私も一緒に連れって!!」
私は泣きながら抱きつくと、ワガママな子供みたいに彼の事を困らせた。
「バカ言うなよ、彩花……! お前には俺の分まで、生きて欲しい! そしていつか、お前を迎えに行くよ…――!」
「海里っ……!」
涙を拭くと彼から離れて扉の前に立った。そして、扉に手をかけた。
「――きっとよ。約束よ、海里。私待ってるから!」
「ああ……!」
私は彼に別れを告げると観覧車を降りようとした。
「――もし、もしね。あの日あの時に私に会いにくるなら、私から海里に会いに行くからね!?」
最後に彼にメッセージを残すと観覧車から降りた。扉を明けた外には真っ白な光りが射した。その光りの渦に呑まれると次の瞬間、クラクションが鳴る音が聞こえた。
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