痕跡

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あの手紙は先生がもらったものなのか、先生が書いたものなのか、宛名も差出人の名前も書いていないその手紙はあの先生が持っているには重すぎるように感じたんだ。 いや、こんなに言うと人の落し物そんなしっかり読んじゃうのって批難されるかもだけど、大事に持ち歩いてたんならちょっとからかってやろうと思ってみたら思ってたより重めの真剣なものだったからこっちもどうしようって感じなんだよね。 で、結局なかなか返せなくてもう2週間くらいこれを僕が持ってるんだけど、もう夏休み入っちゃうし、さすがにその間も僕が持っているのはダメだと決心して夏休み前最後のこの日、30分くらい職員室前をウロウロしているわけで。 ほんと、この性格嫌になっちゃう、いつも大事な一歩が踏み出せないわけで。 ただ、救いなのは夏休み前だから割と呼び出されてる生徒が多くてここに僕がずっといても誰も変に思わないことだ。 いや、というよりきっと誰も僕の存在には気づいてないはず。 「ねーねー、タクト君、俺に用事かな~。ずーーっとウロウロしてるよね。もう、30分になっちゃうよー。」 いた、気づいてる人、しかも僕の用事のある人 最悪だ、30分ってことはここにきてすぐに僕に気づいてずっと観察してたってこと、、恥ずかしすぎる 「すっごく言いにくいことなのかな~、えー、もしかして、もしかしてタクト君、俺に告白なの、実は先生のことずっと大好きでしたっていいにきたの~?」 このヘラヘラした目の前の人を殴りたい、と思うけどそれなのに一言が出なくてなにも言えない僕に 「ん?もしかしてほんとに告白だった?やばっ、無神経な先生みたいになっちゃうじゃん。とりあえずここじゃ話しにくいし俺のお城である体育教官室にでも行こうか。お菓子もあるよー」 結局、何も言えない僕にゆっくり時間を作ってくれるようだ。 やっぱりこの先生は何といっても優しい人なんだろう。 ただ、ヘラヘラ笑ってるだけの人じゃないといつも思わされる。
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