第七章 想定以上の幸福

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 驚く二人に、菜月は勝気に笑いかけてきた。  「妹の結婚写真だよ。私たちが来ないでどうするの?」  「私、?」  正人の疑問に、菜月は当たり前のように答えた。  「兄さん二人も一緒に決まってるでしょ」  「ああ……」  正人は思わず額に手を当てて天井を見上げてしまった。菜月の後ろから、英明と直樹が笑顔で(あらわ)れたからだ。  「萌香が菜月に連絡してきたから、直樹を誘ったんだ」  面白そうに笑う英明とは違って、直樹は優しい表情で萌香を見た。  「萌ちゃん、すごく綺麗だよ。  好きな人とする結婚なんだから、もっと自信を持っていいんだよ」  直樹の言葉に、誰も何も言えなかった。  専務だった頃の尾本(おもと)支社長は、野心的で娘に甘い男性だったのだろう。
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