第七章 想定以上の幸福

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 ***  婚姻届を出した週の終わりに、二人は結婚写真の撮影をするためにフォトスタジオを訪れた。  予約と打ち合わせで二度ほど訪れており、萌香のウェディングドレスも当然決定している。  打ち合わせの時はサイズを合わせるという程度だったが、化粧をしてヴェールをつけた姿を見ると、正人の表情が輝いた。  「綺麗だ」  彼女のイメージどおりの清楚なウェディングドレス姿に、素直な感嘆の声が出たが、聞いた萌香が赤くなった。  「そんなことないよ……平凡だって」  「ママ、綺麗だよな。晴斗もそう思うだろ?」  確認した言葉に返してきたのは、息子ではない。  「正人さんの言うとおり。萌は世界でいちばん綺麗なの。花嫁は、誰よりも綺麗なんだから」  「……菜月」  「菜月、どうして?」
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