第七章 想定以上の幸福

27/30
506人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
 自分の利益と娘の幸せ。  両方を手に入れようとして、結局どちらも得ることはなかった。そして、直樹は会社を去ることになった。  そんな経験をした直樹は、結婚に対して複雑な感情があるはずだ。  だが、妹のように可愛がっている萌香の幸せを喜ぶ彼を見ると、見学くらい大丈夫と思えてくる。  感慨にふける父親とは違って、晴斗は無邪気に菜月に歩み寄っている。  歩き始めた息子は可愛いが目離(めばな)しできない。菜月は、晴斗がよく知る大人だから(なつ)いているのだろう。  「あ~可愛いね、伯母さんのところにすぐ来るんだから。  ママ、綺麗だよね。将来、伯母さんと結婚しようか。晴斗の横でドレス着たいな」  それは遠慮してほしい。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!