第七章 想定以上の幸福

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 「三人が来たから、今するか」  萌香に言うと、彼女は了解したというように頷いたが、訪れた三人には意味が分からないだろうから不思議そうだ。  「撮影前に指輪の交換しようって言ってたんだ。結婚式の代わりだからさ。  〝家族〟が来てくれたんだから、その前でしようかってね」  「なるほどね……だから、指輪してなかったんだ。  入籍したのに、どうしてしてないんだろうって思ってたのよね。できあがってないのかな、とも思ったんだけど、ちょっと日にち()ってるからさ」  指輪は刻印とサイズ合わせを頼んだが、撮影の三日ほど前にできていて、萌香が引き取りに行った。  実物を見ると、その日のうちにつけたくなったが、今日まで我慢していたわけだ。  「それじゃ、今からするのね。  萌、婚約指輪預かるよ。確か、重ねる時は結婚指輪を先にするんだよね」  頷いた萌香が婚約指輪を外して菜月に渡している。東京に来てからずっとつけているから寂しく感じるが、少しの間だけだと正人は思い直した。
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