第八章 君は、俺のすべて

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 結婚して数か月が過ぎて秋になった、ある日、帰宅した正人(まさと)は青くなった。  「萌香(もえか)、どうした?」  彼女はソファで横になっていた。体調が悪いのは見るだけで分かる。  正人の声を聞いた萌香が静かに起き上がった。晴斗(はると)は不安なのか、母親から離れない。  「横になったままでいいから。病院行かないと……遅いから当番医は……」  検索しようとする正人を萌香は止めた。  「明日きちんと行くから」  正人はそこまで待てそうになかった。  「駄目だ。早く行って、きちんと()てもらわないと」  早口の正人に、萌香は首を振った。  「ほんとに大丈夫なの。病気じゃないから」  「病気じゃない……?」  そこまで聞いて、正人は心臓が大きく鼓動を打ったのが分かった。
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