妖怪小話・捌拾壱 以津真天

1/1
前へ
/100ページ
次へ

妖怪小話・捌拾壱 以津真天

「いつまでー」   「いつまでー」    怪鳥・以津真天は、同じ言葉を繰り返しながら、一人の人間の上空を飛び回る。   「ひいい……。く、来るなあああ!?」   「いつまでー」   「いつまでー」    以津真天は、殺された人間の怨念から生まれる。    自分を殺した人間に取りつき、その上を旋回し、鳴き続ける。   「いつまでー」   「いつまでー」    いつまで、自分の死体を放っておくのか。  いつまで、自分を殺した罪を償わないのか。  いつまで、そうやって逃げ回り続けるのか。    いつまで、お前はのうのうと生きるのか。   「いつまでー」   「いつまでー」    朝も。  昼も。  夜も。  室内だろうが屋外だろうが。  国内だろうが国外だろうか。    以津真天は、鳴き続ける。    自分を殺した人間が自首するか、発狂死するまでは。   「いつまでー」   「いつまでー」   「いつまでー」        以津真天の登場により、本来であれば未解決で幕を引かれていたであろう殺人事件は、すさまじい勢いで数を減らしている。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加