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妖怪小話・捌拾壱 以津真天
「いつまでー」
「いつまでー」
怪鳥・以津真天は、同じ言葉を繰り返しながら、一人の人間の上空を飛び回る。
「ひいい……。く、来るなあああ!?」
「いつまでー」
「いつまでー」
以津真天は、殺された人間の怨念から生まれる。
自分を殺した人間に取りつき、その上を旋回し、鳴き続ける。
「いつまでー」
「いつまでー」
いつまで、自分の死体を放っておくのか。
いつまで、自分を殺した罪を償わないのか。
いつまで、そうやって逃げ回り続けるのか。
いつまで、お前はのうのうと生きるのか。
「いつまでー」
「いつまでー」
朝も。
昼も。
夜も。
室内だろうが屋外だろうが。
国内だろうが国外だろうか。
以津真天は、鳴き続ける。
自分を殺した人間が自首するか、発狂死するまでは。
「いつまでー」
「いつまでー」
「いつまでー」
以津真天の登場により、本来であれば未解決で幕を引かれていたであろう殺人事件は、すさまじい勢いで数を減らしている。
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