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第3話【茶色い塊】
私の顔をじっと見つめるエマ。
何を思ったか、両手でいきなり私の耳を引っ張った。
「ちょっと! 何するのよ!?」
特に痛いわけでもないのでなすがままにされていると、エマは私の耳を撫でたり顔を近付けたりしてくる。
エマの吐息が耳にかかるので、ゾワゾワする。
「ほ、本物ですね?」
「当たり前でしょ。どこの世界に偽物の耳を付けて喜ぶ人がいるっていうのよ」
「あ、いや。そういう人はいると思いますよ。付ける方も付けてるのを見る方も」
「え?」
「ああ! なんでもないです。とにかく! ルシアさんって、正真正銘のエルフなんですか!?」
明らかに興奮した様子でエマは私の答えを待っている。
顔は紅潮し、黒に限りなく近い茶色の瞳は輝いていた。
そこで私はエマの顔にかかっている物の存在が気になった。
「ねぇ、エマ。あなたの顔に付いている二つの丸は何?」
「え? ああ、これですか? これはメガネと言って、視力、物の見え方を助ける道具ですね。って! 違いますよ!! ルシアさんはエルフなんですか? そうなんでしょう!?」
「ええ。私はエルフね」
既に確信していたのだろうけれど、私の口からその答えを聞いたエマは、立ち上がり両手を天に突き出した。
口からは声にならない叫び声のようなものを発している。
エマが立つと私との身長差のせいで、私の目のすぐ下にせり出した胸がやって来た。
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