第3話【茶色い塊】

2/6
前へ
/16ページ
次へ
 私は思わず視線を上下し、自分のものと見比べてしまう。 「早速ですが、ルシアさん!! お願いがあるんです! 私を魔法の弟子にしてください!」 「魔法?」 「ええ! こう見えて私、ちょっとは名の通った魔導師なんですよ! ただ、どうしても越えたい相手がいて……そこで! 種族全てが膨大な魔力を持ち、優れた魔法の数々を扱う種族、エルフの弟子になることに決めたんです!!」  エマは私と目線を合わせるためか、前屈みになって私を見つめてきた。  私の目線はエマの顔を通り過ぎ、その向こうにある服の隙間から現れた二つの山とそれに挟まれた谷に吸い込まれているけれど。 「お願いします! この通り!! さっきのバイコーンをやっつけたのも風魔法なんですよね? 無詠唱でそんな威力を出せるなんて!」 「ううん。あれは魔法なんかじゃないわ。ただ棒を振っただけよ。私は魔法なんて使えないし」 「ええ!? そんな!? エルフなのに魔法が使えないだなんて!」  エマの放った『エルフ()()()』という言葉に、まるで魔法をかけられたかのように私の身体は固まる。  それに気付いたのか、エマは慌てて胸の前で両手を左右に振り、謝ってきた。 「ご、ごめんなさい! 事情も知らずにズケズケと! 悪気があった訳じゃないんです。でも、ルシアさんにとってはすごく失礼な言葉でしたね。本当にすいません!!」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加