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私が生きた千年の中のほんのひと時を過ごしただけの女性。
そんなエマは私が欲しかった、欲しくて堪らなかった言葉を、言ってくれた。
エマから感じる温かさとは別に、私の身体の中にも温もりを感じた。
「そうだ! 私いいもの持ってるんです。悲しい時にはこれに限ります。美味しいものを食べれば、悲しい気持ちなんかすぐに吹っ飛んじゃうんですから! 一緒に食べましょう!」
エマはそう言いながら私から離れ、腰に付けた鞄の中から、小さな包みを取り出した。
さっきの言葉からすると食べ物らしい。
「はい! ちょうど半分こしました。こっちはルシアさんの分です」
「ありがとう……」
エマから手渡されたものは、四角い形をした茶色い塊だった。
どんな味がするのか全く想像できず戸惑っていると、エマが笑顔で私を見つめているのが目に入る。
それでも口にできずにいると、エマは何か気付いたような素振りを見せ、おもむろに右手に持った自分の塊を口にした。
何回か咀嚼を繰り返した後、にんまりと顔を崩す。
「毒は入っていませんよ。安心してください。騙されたと思って食べてみてください。凄く美味しいんですから!」
「う、うん……」
目をつぶったまま塊にかぶりつく。
カリッと軽い音を立て、塊が舌の上に触れた瞬間。
「わっ⁉︎ なにこれ! 甘くて……すっごく美味しい‼︎」
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