第3話【茶色い塊】

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「でしょ、でしょ⁉︎ 私のお気に入りなんです。気に入ってくれたみたいで嬉しいです」 「コレは何? こんなもの食べたことがないけど」 「マルレっていうお菓子ですよ。すり潰した木の実の粉と蜜を練り合わせて固めたものです」 「マルレ! 凄いね、エマ。森の外にはこんなに美味しい物があるの⁉︎」  気付けばエマからもらったマルレはすっかり消えてしまった。  私は口の中に広がる甘い余韻を楽しむように舌をあちこち動かす。 「いっぱいありますよ。ムーのクリームを使ったケーキは味が濃厚で頬っぺたが落ちますし、ピーベリーサンドは酸味と甘味が絶妙で何個でも食べれますし……他にもまだまだ私も食べたことのない美味しいものが世界にたくさんあるんです!」 「凄い! エマはこんなに美味しい食べ物をいっぱい知ってるんだね‼︎」 「えへへ。自慢じゃないですけど、私の夢の一つは世界中の美味しいものを食べることですからね。ここに来る前も色んな所を旅していたんです」  にこにこと話すエマの顔をじっと見つめ、私は思いついたことを口にすることに決めた。  エマの願いを叶えることができなかった私の頼みを、エマは聞き入れてくれるだろうか。 「ねぇ、エマ。お願いがあるんだけど……私も……私もエマの旅に同行させて!」 「ええ、もちろん……って? ええ⁉︎」
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